「地方議会議員の厚生年金制度への加入を求める意見書」に対する反対討論

 私が九度山町議会12月議会最終日に行った発議第2号「地方議会議員の厚生年金制度への加入を求める意見書」への反対討論は以下の通りです。なお、下記の文章は討論の原稿です。議事録に掲載されたものが正規の討論となることをお断りしておきます。

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 発議第2号「地方議会議員の厚生年金制度への加入を求める意見書」に反対の立場から討論を行います。

 私がこの意見書提出に反対する最大の理由は、十分な審議、議論がなされていないということにあります。この意見書案が示され、その内容の説明があったのは、12月15日の本会議後に開かれた全員協議会で、この件に要した時間はわずか数十分です。私はこの意見書案を読むにつれ多くの疑問や意見などを持つに至りました。しかし、その疑問や意見などに対して十分な審議、議論が行われたとは思えません。公職である議員の処遇や税金の負担をともなう案件については、熟議の上、町民の理解を得る必要があると私は考えます。しかし、残念ながらそのために必要十分な時間と場が持たれず、今日の本会議での討論を迎えることになりました。よって、私の意見を述べることができる最後の機会であるこの討論で本案件に対する私の意見をすべて述べ、議員のみなさんに本意見書に反対することへの賛同を求めるものです。

 さて、みなさん。私は、この意見書案を見て大きな違和感を覚えました。意見書案では、「町村では議員への立候補者が減少し、無投票当選が増加するなど、住民の関心の低下や地方議会のなり手不足が大きな問題になっている」と述べた上で、「国民の幅広い政治参加や地方議会における人材確保の観点から、地方議会議員の厚生年金制度加入のための法整備を早急に実現するよう強く要望する」とこう述べています。つまり、「国民年金だけでは議員退職後に受け取ることができる年金は少なく、老後の生活が心配。だから議員のなり手が減っている」というのが、提案理由の根幹です。これは明らかに論理が飛躍しています。このような理由で、地方議員の厚生年金加入を求めることには、とうてい賛成できるものではありません。確かに、地方議員の中でも、町村議会議員は、議員報酬が低いなど、その処遇改善の必要があることは私も認めます。また、年金制度の改善の必要性はないわけではありません。

 そこで、少し地方議員に関わる年金制度に触れておきたいと思います。
地方議員が加入する年金制度は、1962年に地方公務員共済組合法に基づく強制加入の制度として規定されました。いわゆる議員年金制度です。その後2011年にこの議員年金制度は廃止されました。地方議員年金の廃止といっても、制度廃止の時点で、すでに議員年金を受給していた人には、現在も引き続き議員年金が支給されています。また、現職議員で議員年金の受給資格を有する在職12年以上の議員も、退職年金または退職一時金を選択することができるとされています。地方議員年金制度の完全廃止までには、これからまだ60年かかると国は言っています。その間に最大1兆3600億円もの税金が投入されるという試算がだされています。本町においても、議員年金支給のため町が負担している金額は議員年金が廃止された2011年度決算額で2566万8千円、昨年度決算額で1699万6800円となっています。議会費に占める割合は、2011年度で31.5%。昨年度で25.2%と大きな負担となっています。

 まずこのような現状を踏まえ、私は、この意見書に反対する4つの理由を述べます。

1.非常勤の議員が厚生年金に加入するのは問題あり

 地方自治法第203条において、常勤職の「給与」とは区別され、議員には「報酬」が支給されることが規定されています。厚生年金への加入を求めるのであれば、非常勤という地方議員の身分や働き方を「常勤」に変えることと、議員を「被用者」にする必要があります。しかし、議員を「被用者」とするのには大きな問題があります。議員を被用者とするということは、町長との関係で見ると、町長に雇われるという関係にするということです。議員の身分を町長に雇われている、つまり町長の部下にするようなことは、二元代表制という地方自治の制度に反するものです。

2.2011年に廃止した特権的な議員年金よりも税金負担が大きくなる

 2011年5月に「すべての地方議員に特権年金があるのは世界でも日本だけ。国民生活と乖離した悪しき制度」として国会の全会一致で議員年金廃止法案が成立しました。この廃止された議員年金は、議員が支払う掛け金が6割、税金4割で運営されていた議員の負担の方が大きい仕組みでした。しかし、提出しようとしている意見書で求めている厚生年金加入では、年金保険料の5割を税金で負担することになります。地方議員が厚生年金に加入することが実現してしまうと、かつての税金4割負担以上の特権的な議員年金制度ということになります。もし、この意見書が求めるように、現在の全地方議員を厚生年金に加入させるとなると、国民の負担は毎年170億円増えると予想されています。これでは、一度廃止したものが形を変えて出てきたとしか言いようがありません。本町においては、毎年負担している議員共済負担金に加え、更なる負担を町に求めることになります。この負担増を一般財源で賄うとなると、それは町民に負担をもとめることと同義です。

3.無投票選挙が増えたことなどの議員のなり手不足の問題の解決を厚生年金加入に求めるのは論理の飛躍

 議員の成り手不足には、様々な要因があることが議会の内外から指摘されています。町村においては、過疎化、少子高齢化でそもそも人口が減っていること。平成の大合併の結果、合併後の議会で人口比での議員数が減ったことにより、当選のためのハードルが高くなったこと。議員報酬が少ないため、議員と兼業できる仕事を持っている人でないと生活が成り立たない。などの理由があります。なによりも重要なのは、住民に身近に感じてもらえるような議会になっていないことや、情報公開、情報発信が活発ではないことで、住民から見て議会と議員が何をやっているのかわからないと思われていることです。議員が魅力ある、そしてやりがいのある仕事と思われていないことが、「議員のなり手がいない」ことの大きな要因ではないでしょうか。議員の成り手のない原因、理由は一つではありません。にもかかわらず、議員のなり手がいないことの理由を年金に求め、それをもって意見書の主旨としているのは論理の飛躍でしかありません。
 
4.これでは住民の理解を得られない

 国民年金だけでは老後に不安の残る議員は、被用者以外を対象にした公的な年金制度である国民年金基金や民間の年金に加入することができます。国民年金では足りず、老後が不安だと思うなら、議員の年金を増やす前に、まず国民年金しかない自営業者や農家など年金弱者のことを考えるのが、政治を担う者の役割ではないでしょうか。
 政府自民党は、「年金カット法案」と批判されている国民年金法等改定案の成立を強行しました。物価が上がっても、賃金水準が下がれば年金を減額する。物価と賃金の両方が上がっても、年金額を抑制する「マクロ経済スライド」の仕組みの強化で、物価も賃金も上がらなかった年の「抑制分」は翌年以降に繰り越され、年金の目減りが続くことになります。このように政府自民党は、年金が目減りする仕組みを国民に押し付けています。政府が国民に年金が目減りする仕組みを押し付けているのに、その政府に、議会が「自分たちが受け取れる年金を増やす制度をつくってほしい」という要望を出すようなことは、どう考えても国民、住民の理解を得られるとは思えません。

 この意見書を採択するということは、地方自治体の運営にも大きく関わる地方議員の厚生年金の加入による老後保障という案件を、住民の意向を無視して決めることです。国会での法整備を求めているから、問題ないは言えません。制度実施が決まった場合、その公費負担は町が負担することになることは想像に難くありません。議員の厚生年金加入というような制度改定は、その住民負担を明確に示し、住民が納得した上で制度化を求めるべきではないでしょうか。

 以上が、私の反対する4つの理由です。今後ますます社会保障費が膨らむことは間違いありません。その財源の確保のためにさらなる負担を町民のみなさんにお願いする立場にある議員が、自分たちが受け取る年金を税金の負担で増やすことを国に求めることはおかしいのではないでしょうか。町民の苦しみに寄り添わず、自らの処遇改善に取り組む姿を町民にさらすことは、町民から反感を買い、それこそ「議員のなり手を減らすこと」になるものであると私は危惧します。

 さて、みなさん。議員が厚生年金加入となれば、全国の地方自治体で多額の事業者負担が発生することになります。地方議員の中でも、町村議会議員などは議員報酬が低いなど老後の備えに不安があるなど、年金制度の見直しの必要性はないわけではありません。しかし年金の現状、国民、町民の生活実感、さらに地方自治体の事業者負担など検討すべき課題が山積しています。それだけに慎重に検討することが必要で、拙速な意見書提出はやめるべきです。今一度立ち止まって、この意見書をこのまま提出するのが良いのかどうか熟慮すべきです。決して急ぐ必要はありません。このことを心よりみなさんに訴え、私の討論を終わります。

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